演劇デザインギルド

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西の魔女と東の狸

去る2013年1月14日、ギルドカフェVol.13 西の魔女と東の狸 〜演劇デザインギルドのメンバーが考えてきたこと、そしてこれから考えていくこと〜 を行いました。 東京では数年ぶりの大雪で、交通機関の乱れ、足下も悪い中、たくさんの方にご来場頂きました。だいぶ日が経ってしまいましたが、当日の様子をここに報告させて頂きたいと思います。

事前に、西の魔女こと竹森茂子と、東の狸こと成沢富雄に、それぞれ演劇デザインギルドのメンバーがインタビューし、聞き書きに書き起こし(インタビューされた人が一人で話しているかのように、一人称で書き起こされた文章)、それを当日読みました。竹森茂子成沢富雄両名の半生も楽しみながら(?)お聞きいただきましたが、聞き書きという手法についてもたくさん話されました。

ここでは、フリートークと申しますか質疑応答と申しますか、会の後半に行われたディスカッションについての記録を公開いたします。なお、当日の進行は下記の通りでした。

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2013年1月14日 於:世田谷区立男女共同参画センター「らぷらす」研修室

14:00 開会
14:05 成沢富雄による聞き書きの説明と本の紹介
14:15 東の狸の聞き書きを読む(すずきこーた、中村麻美)
14:45 西の魔女の聞き書きを読む(開発彩子福原忠彦
15:15 竹森茂子成沢富雄及び 聞き書きした(読んだ)メンバーに感想を聞く
15:30 フリートーク
16:00 終了

以下、フリートーク記録
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花崎

wwer01私たち、演劇デザインギルドがやっている「聞き書き」は、記録として冊子をつくることを目的にするというよりは、だれかの話を聞いて、それを書き起こして、声に出して読んだり、今日は読んだだけだったんですけれども、もう少し演劇的に展開して、演じることを含めたりします。インタビューを受けた人も含めて、ワークショップの場合は参加者の人たちと進行していますので、記録を残すというよりは、話を聞いたり、話をきいたことをもとにして一緒に何かを考えたりする道具といいますか、ツールといいますか、として使っています。「ひとの話を聞くのっておもしろいよねと思っているので、こういう会を開いてみました。
で、狸さん、魔女さんにちょっと、自分の聞き書きを聞いてみてどうだったか、感想というか…。初めてですよね?あの、聞き書きを起こす方はやっているけれども、聞かれて(取材を受けて)、自分の聞き書きを読むのを聞くという経験は初めてだったと思うんですけれども、どうでしょうか?
 

成沢
汗顔の至りというか、汗が出てきて…。あの、しゃべってる時(取材を受けている時)の状態と、ここで聞いている時の状態が違うから、それがすごくドキドキだね。しゃべってる時に相手に向かってしゃべってる無防備な言葉がそのまま出てくるんだよ。
 
竹森
そうなの、そうなの。私こんなこと言ったっけ?みたいな。
 
成沢
えーってか、なんかそれがかなり…、それが……。しゃべった本人はそういう感じ。
 
竹森
takemoriっていうか、私がしゃべったことの、しゃべったトーンとそれをインタビューして読んだ、開発さんと福原さんのトーンがまったく違うんだっていうことがよく分かりますね。あの、分かりましたね。つまり、私は軽く言ったつもりだったのがものすごく深刻になっていたり、深刻なつもりで言っていたのが軽くなっていたり…。あの、しゃべり言葉だし、それを書く作業の中で整理されてものも、あるようなないような感じもあるんだけれども、割合とそれを残しておいてくれたのはくれたんだけれど、なんか音の出方って言うか、私のしゃべっているトーンとはかなり変わるんだなっていうのを、聞いていて思いました。そこが演劇ワークショップの良いところでもあり怖いところでもあるんだろうかと、いうのが一つと、それ別に私の人生を一つ一つ聞いてもらって、たいした人生でもなくたいした人生でもある、のを、どういう風にやるのか何のためにやるのかっていうところを、少し揉んでいかなくっちゃな、ていうのを感じました。どういう風に揉むのか分かんないんだけど…。
 

花崎
事前に二人は原稿を見ています。文字に起こした原稿は見ています。ただ、聞いたのが初めてだった。
 
竹森
うん、全然違う
 
花崎
そうなんですね。実はもっと膨大に聞いたんですけれども、今日聞いて頂いたのはその中の一部で、その内容については、書き起こしたチームの人が、自分が引っかかったとか、ここをぜひやりたい、ということでセレクトして聞いて頂きました。
では、何か…。こちらの方で はこの点について話そうというテーマを決めているわけでは無いんですね。ただ、さっきもちらっと言ったんですけれども、結構「面白いな」と自分たちでは思っていまして、演劇のもとのひとつかなぁ、あるいは演劇ワークショップをやっていく上で、ひとに話を聞くというのがすごく面白いと思っているものですから、あの、皆さんにも是非どうだったかということをうかがっていきたいんですけれども、ちょっとその前に、聞き書きをした人たちにもどうだったか…。ギルドのメンバーは他のワークショップの機会とかに他の人(ギルドのメンバー以外の人)に聞いて聞き書きをしたことはあるんですが、実は、成沢、竹森に詳しく話しを聞いたことが無かったので、この機会に是非、ということでやったんですが、どうでしたか?
 
中村
nakamura今回の企画の趣旨の一つは聞き書きというやり方の面白さを伝えようということ。もうひとつは、演劇デザインギルドとして私たちはこれからどういう活動をしていったら良いのだろうか、どういうミッションを持っているのかを確認するということでした。4月に合宿で長い時間話し合いをしたんですけれども、やっぱり一人一人の言葉をもう一回改めて聞きたいというか。ここ(ホワイトボード)にも書いてありますが、何でギルドのメンバーなのか?とか、何で演劇とかワークショップとかに興味を持っちゃったのかとか。そういうのを聞きたいというのが根本的にありました。私は成沢さんに、狸に(笑)、聞いてみて、演劇のことを直接的に語っている部分も興味深かったのですが、私が気に入っているのは、高校の時の砂のエピソードです。って言うのは、成沢さんの演劇とか、社会、集団との関わり方というか、成沢さんが社会の中でどう繋がりをつくっていったのか、というものすごく成沢さんの根本的な部分が感じられるエピソードなんじゃないのかな〜って。なんかそういうのがすごい面白いと思いました。
 

開発
私は、やってみた感想は…、茂子さんとは、今までのつきあいの中で何百時間とか多分いろいろ話をしてきてるはずなんですけど、やっぱり初めて出てくる話って言うのもあって、普段の会話をしている中では生まれないものというか、が、生まれたなというか…、ですね。だから茂子さんが演劇をやる動機になった、アンクル・トムズ・ケビンの話っていうのは、本当に知らなかった。
 
竹森
私も、本当に初めて話したと思う。
 
開発
kaihatsu(竹森に)だからすごく、しまっていたものが出てきたって言うのが、面白かったというか、感動的だったというのかな…。ね…。人から話をじっくり聞くことの贅沢さっていうのをすごく感じましたね。人と話すことをは日常的にしてるんだけど、やっぱり人間って、こう、いろんな層があって、すごい表面のところで接してたり、でも実はすごく深いところがあったり、そういう層みたいなものがあるっていうか…。っていう事ですかね…。あとは、今日初めてこうやって読んでみて、どうなるかわかんないなと思いながらやったんですけど、やっぱり、ま、物語って何なのかっていうことをすごく考えましたね。「聞き書き」がフィクションとかノンフィクションとかっていうことについても、今日ここでは読んでないですけど(取材の中で)話がでて…。ワークショップの現場でも、ワークショップを開いて、いろんな人が集まってきて、そこで自分の物語を、直接じゃなくてもなんらかの形で語るって言うことは、起っていることだと思うんです。自分はこう思うんだ、とか自分はこういう体験をしたんだ、ということがたくさんワークショップでは出てくるんだと思うんですよね。そのこと自体が、語るほうも見るほう聞くほうもすごく面白いと感じる人間ってなんなんだみたいな(笑)。意味分かんないか(笑)
 

竹森
危険性もありますよね。あの、前も話したことあるけど、とても真面目な人で、自分がアメリカに留学した時に、沖縄から、あの、日本にいるとすごく差別されて辛いんで、沖縄の人がアメリカに逃げていった、みたいな感じで言う人が何人かいて、その人たちの話を聞き書きしながらドキュメンタリーで撮って、フィルムを回して撮ってた人がいて…。その人は途中から「私はいったい何をしているんだろ。こんなにこの人たちの辛い話を聞いて何を作ろうというのだろう。いやらしい」っていうか、気持ち悪いって思って、でもそれはとりあえず卒業のための何かだったので、作って、先生に評価されて、ずっとしまってた物なんだけれど、観た人が、やっぱり上映して観るべきだっていうことで、上映したら、すごくいろんな反響があったって事なんだけど、彼女はもう二度とドキュメンタリーは撮らないって言って、ま、筆を折る、じゃないけど、ものを作ろうと思っていた人なんだけど、ビデオ撮るのをやめちゃった、ドキュメンタリストになるのをやめちゃったっていう、知り合いがいて、その時に彼女の気持ちは、なんかいろいろ分かるって言うか、聞き書きの面白さと同時に怖さ、とか、上手く言えないんだけど、その人の言おうとしたことが何なんだろう、っていうことはあります。
 
開発
ま、茂子さんが居心地悪そうにしてるな、っていうのは、やってる途中でも思ったんだけど。
 
竹森 どうしていいか分からないみたい…
 
開発
でも、話した後は受け止める側のものになっちゃうから、そこはこらえてって感じなんだけれども。だから、これが歴史ですっていうふうにされていることとか、これが本当のことなんですって言われていることとかあるけども、そのことを疑うとか…、そんな事を考えました。
 
福原
fukuhara感想は…。やりづらかったですね。今回は、身近な者同士だったので、茂子さんも話すモードに入っていたし、最初からすごく聞きやすい状況が作られていたんですけど、ただその分だけ、特徴とかが自分の中で、既に関係が出来てる中でもう見てきてる部分なので、捉えづらかったなというのがあって、第一印象でないところでやっていかなければならなかったので、結構大変な感じがしました。だから今日お見せしたのも、思い切って自分が感じたものを出せば何とか行けるのかな、と。でも、初めて会う人の方が、私の場合は緊張から入るので、癖とかも捕まえやすかったと思いました。ただ、内容的には、今までこうやって一緒に活動していても聞く機会がなかったので、こういう形で時間を取らなければ逆に聞けなかったこと事だなぁと思いました。今回はみなさんにもお聞かせできてない部分もたくさんあるんですけど、特に女性の問題に至るまで、例えば結婚のことなんていうのも、なかなか一緒に活動しててもそこまで聞けなかったことなので(笑)
 
竹森
初めて言った…
 
福原
やっぱり、自分と同世代の時にどんなことしてたのかな、というのを聞き出せたのが、これからちょっと、新しい繋がりというか、会話が出来るようになるのかな、という感じがしました。それはすごく良かったです。
 
すずき
ちょっと聞いても良い?ふっきー(福原)は葛飾の方で、聞き書きを読むみたいなこと、散策劇場というのをやっているでしょ?散策劇場と今回のとは、どこがどう違ってた?飲み屋の人に聞くのと、メンバーに聞くのと、また、こういう場(会議室)でやるのと。散策劇場では飲み屋の店の前で読むとかさをやってると思うんだけど、そこの違いっていうか…。
 
福原
まず、(聞き書きを書いたり読んだりするのが)一人じゃないので、気持ち的には楽でした。ぱっつん(開発)とだけということでなく、演劇デザインギルドでやっているので…。(全体に)あ、私、あの、地元(立石)で、地元の人とか、お店の人を紹介するという活動をやっていて、その時はほとんど一人で説明することが多かったので、「地元の良いところを紹介しなきゃ」というプレッシャーというか頑張りというか、気合いみたいなものがあって、今回は、ま、私が失敗してもギルドのメンバーがいるからっていうのも(笑)あったし、あとは、お店の人たちは(聞き書きという)方法も分かってないですし。(今回は)いざとなったら茂子さんがなんとか拾ってくれる、というところがあったので、そこには信頼関係があるから、基本的にはすごく楽でした。
 
すずき
suzuki僕も、成沢さんと出会ってずいぶん経つわけですけれど、知っている話もあるし、初めて聞いた話もあったんです。それをまとめて聞けたのが面白かったなというのが一つにはあります。でも僕は出会って15年か16年か分からないですけれども、幸か不幸か、ずっと断続的につき合い続けている(笑)ので、(話が)分かるし面白いって思うんですけど、インタビューしている時も思っていたんですが、ギルドのメンバー以外の方は、聞いている人たちっていうのは本当に面白いのかな?っていうことも思いました。そういう意味で、茂子さんのことも知っているし、(聞き書きを聞いていて)すごく分かる話が多かったので、面白いなぁ、と思いながら聞いていたんですけれど…。もう一つ面白いなぁと思ったのは、聞いている時(取材をしている時)に僕ら(ギルドのメンバー)だからなのかもしれないですけれども、一方的に話を聞くというよりは、例えばあさみん(中村)が突然「ウチの職場では」みたいな話になってみたりとか、「僕はこんなことを思うんですよ」と僕が言ってみたりとか、なんかそうことが取材の中、話し合ってる中でも行われていて、そうのが僕は面白しろかったなぁ、と思いました。
また今日やってみて思ったこともりました。聞き書きを書いて、それを(本人の前で)本人だけのために読むのと、他の人が聞いているっていうのが、ずいぶん違うだろうなあということです。もちろん、僕が受け止めたことはこういうことですっていうのはあるので、聞き書きのことでも「僕はぜったいここのことは言いたい」とか、あさみんは「ここの部分を言いたい」とかいうことがあって、そこの部分は残しておいたんですけど…。例えば成さん(成沢)は「ここをカットした方が良いんじゃないか?」みたいなことを言ったりして、理解できる部分もあるんだけれども、「いや、ここはあえて読みたい」みたいな部分もあったりして、そういった時に本人だけに聞かせると「僕はこんな事を感じました」というように、より本人に対して返していけるような気がするんですけれど、他に人が聞いてるって言うと、また違う関係性が生まれるな、みたいなことを思いました。聞き書きをいっぱい書いてるし、読む場っていうのをやっているんだけれども、違う発見が今日あったな、というのが僕の感想です。
 
花崎
ここで是非、聞いていた方の感想、あるいは質問をうかがいたいのですが…。「やってます、やってます」と言いながら、じゃ、いったいどこでやってるんだっていう話もあると思うんですけれども…。例えば、福原君はさっきちょっと話に出ましたが、葛飾区、自分が育った地元で、お店の人に話を聞いて、聞き書きでまちを案内するっていう、演劇仕立てのガイドなのか、ガイド仕立ての演劇なのか分かりませんが、をしていたり、こーた君(すずき)とか成さん(成沢)とか私とかは、今年はやっていないんですけれども、長く世田谷パブリックシアターというところで、地域の物語ワークショップという企画がありまして、参加者の方と一緒に地域に出かけていって、地域の人に話を聞いて演劇を立ち上げるっていう時に、いろんな方にインタビューをして聞き書きを書く、っていうようなことをしていました。
 
すずき
学校の授業なんかで、子どもたちと一緒にやることもあります
 
花崎
最近ね、こーた君は中学校でやったりもしています
 
竹森
聞き書きするの?
 
すずき
聞き書きしてます
 
竹森
外に出ていって?
 
すずき
外じゃなくて、あんまり時間がないので、何人かの方に(学校に)来て頂いて、グループに分かれてお話を聞くとういことをやっています。
 
花崎
そういう風に、いろんなところで、いろんな使いようと言うか展開というか、も考えられるし、私たちも考え中というか試行錯誤中なので、そういう質問でも構いませんし、今日聞いてみてどうだったかとか、すごい疑問だったとか、あるいは今出てきた(ギルドのメンバーの)感想の中で、物語のことだとか、インタビューされる人とインタビューする人との関係や、聞いてくれる人というか、参加者だったりお客さんだったりするわけですが、そういう関係が常に発生するんですけれども、そういうい事でも良いですし、あるいは単純に「狸さんの半生をもうちょっと聞きたい」とか、まあ、それはあまり時間がないかもしれませんが…。どういう事でも構わないので…。
 
Aさん
ちょっと遠くからきたもので良いですか
 
花崎
はい、どうぞ
 
Aさん
(私は)演劇のワークショップを研究しているんですけれども、抽象的な質問であれなんですが、演劇ワークショップの良いところと悪いところみたいなことが出ていたと思うんですけれども、それを一人ずつ簡単にお聞かせ願いたいと思います。それは昔と今と変化があったかどうかもお聞きしたいです。ま、以前はこうだったけど今はこうだとか。ちょっと聞きたいんですが…。
 
花崎
難しいですね。それは聞き書きに限らず、ということですか?
 
Aさん
聞き書きに限っても構わないです。
 
花崎
わりとざっくりとどうなのか、という…、ことですね。
 
成沢
narisawaざっくりと言うと、社会の方が変わってきたので、つくっている場は結構影響されますので、最初はどっちかというとワークショップって箍の外れた開放空間的な感じで、80年代くらいから1990年代くらいまではあったかもしれないんですけれど、ちょっと、だから、なんとも言えないんですけど、様相は変わってきてますよね。なんか別の社会みたいな、別のルールの社会みたいな感じもありますから、どっちが良いとか悪いとかじゃないんですけど、そういう風にワークショップ自体が一回社会的な関係の箍を一回外してっていう風な形での成形のされかたをしてたとしたら、その辺の社会とワークショップの関係みたいな…、そんなに距離がなくなってきちゃっているというか、そういう批評的に場が…、出来なくて、むしろ場が、巻き込まれた感じかな…。
 

Aさん
それはなんか、さっきおっしゃっていた、パターン化しているというような…
 
成沢
なんか全部…、お互いに自己紹介なんかをやって、発言を等分にやっていくようなルールとか、そういうのがなんかこう、ルールって言うか、場が、そういう風な場しかなくなってきている、感じがちょっと、すごく個人的なあれ(見方、感じ方)ですけど、感じたので、そういう発言になったと思います。ほんとにね、でも、怖いですね…、聞き書きは(笑)。
 
竹森
wwer03私は、聞き書きは、なかなか難しいって言うイメージがあって、自分がやるワークショップではあまり「聞き書き」っていうふうな言い方でのやり方はやらないですね。あの中(聞き書き)にも出てくるように、女性の、フェミニズムからわーっと出てきた、その、間あたりには、それこそいくらでも芝居がつくれるくらい、物語って言うか、女の人、それは私は女性としかやっていないからあれなんですが、言いたいことが山のようにあって、そこでわーっと止められたのが堰を切ったように出て、本当にいくらでも、いっぱいつくったんですよ。こんなに、別に、インタビューしなくても勝手にしゃべっちゃうとか。なんか、それくらいあった状況から、今度は違う、「私の話を聞いて」みたいな風になっていって、これはいったいなんなんだ〜、みたいな。ちょっと怖いなぁとか、聞くのもしんどいな、とか。だから何か、功罪はあると思います。これが絶対良くて、これが絶対悪いっていうのはないと思うし、だから私も、その辺はなんとも言い様がないんですけれども…、すごくあるとは思いますね。だから、使う方がどういう風にそこを考えていかなくっちゃいけないか、っていうことはすごく大事なことで、その、特に聞き書きは、私はドキュメンタリーっていう映画の手法は好きなんですけど、これもすごく危ない。「ゆきゆきて神軍」っていう、あれも怖かったですよ私は。やっぱり…。面白いんだけど怖いって。なんかものすごいこと、もしかしたらやばいじゃんっていう、その合間みたいなところを、ま、演劇はそこまでは行かないとは思うんですが…、なんか一人の人が物語をつくってしまったら危ないかなって。だから、もうちょっと揉める場があれば良いのかなっていうふうには思うので、演劇ワークショップの中での聞き書きの使い方は、まだもうちょっと可能性はあるかなっていう気はしますが、どういうものって言われても、ちょっと分かんない、今日やったものも良かったかどうかも分かんないです。そんな感想です…。
 
花崎
(ギルドの)他の人も何かあれば
 
福原
良いところと悪いところ…(ですか?)
 
Aさん
そういう言い方が良いかどうか分かんないですけど…。
 
福原
私は単純に、言葉だけじゃない世界、身体を使って表現するを可能性みたいなところをちゃんと拾えるところが、演劇ワークショップの良いところだと思います。ただ同時に危険なところというか、最近自分が考えているのは、ここ数年でワークショップって言う言葉も、そりゃもう成沢さんがやり始めた頃とは、もう、全然違うような領域になっていって、やっぱり、権威的になってきている部分もある。ギルドのメンバーは別にファシリテーターとか進行役の資格なんてことを言い出したりはしないんですけど、なんかこう、資格を取るためにファシリテーションを習うみたいなことがあって、そうなるとビジネスになってきちゃってるなっていうのがあって、なんか、資格があればその仕事が出来るとかっていうこと以前のところが本当はないと、同じ問題を扱うにしろ、なんか触れていける領域が全然違くなると思うんですけれど…。ギルドはその辺をかなり不器用にやっているので、なんとも言えないんですけれど、その人たち(ギルド以外の人たち)がやっているファシリテーションを見ていると、形式的だなっていう感じがして…。多分、会議を回すことが出来たとしても、問題の根っこの部分に本当に触れることはなかなか難しいんじゃないかな、という問題意識は持っています。
 
花崎
こんな感じでよろしいでしょうか?他に何かありますでしょうか?今と全く関わりの無いことでも構いません…。実はこんな天候(大雪)なので、あと10分位しかないのですが…。
 
Bさん
初めてうかがったのですが、すごく楽しかったです。私は二人(成沢、竹森)は全然知らないんですけど、お話はすごく面白かったです。なんで面白いのかなって思ってたんですけど、すごく個人的には、自分より年上の方の人生って言うものを聞くって言うことによって、「あ、こういう道もあるんだ」とか「こういう人生のものがあるんだな」とか、そういう事が、自分に、みなさんのお話をうかがうことでまた自分を振り返ったり、これから「あ、こういう事もあるかもしれないな」とかって言うことで、非常にこう、面白いなぁって、自分にまったく無いところもあったし、すごく「こういう事もあるんだな」ってやっぱり、人間の人生をうかがうのってすごく面白いな、って思いました。あの、こういう話を聞いてみんなでシェアするって言うのは、すごく、いろんな一人一人の人間が、いろんな人生があるんだって言うことを知ることだけでも、あの、すごく豊かな経験だったなと思って、今日はすごく面白かったです。で、ひとつ質問なんですけれども、私遅刻してしまったので、もしかしたらもう話されたかもしれないんですけど、聞き書きって言うのはレコーディング(録音)するんでしょうか?それとも聞いたものをそのまま書く感じでしょうか?どういう手法でしょうか?
 
成沢
今はレコーディングっていうか、あの、携帯用の録音機器なんかもあるんで、大体録音しているとは思いますけれども。ま、一番最初の時は、ま、使わないでやったこともありました。記憶でばーっと書いたこともありましたけども。
 
花崎
普通のまちの方とかは、録音って言うとすごく、「(引きぎみに小さな声で)録音ですか…」って構えてしまう方もいらっしゃるので、また勝手に録音することは出来ないので、許可を頂くって言うことになって、だから、最初のうちは、(成沢に)ね、もう必死でメモを取る、(Bさんに)だから、話を聞く係の人とメモを取る係の人、チームでやったりとかも、していましたね。今回は録音しています。
 
Cさん
今こうインタビューを聞いて、読まれた方は、インタビューした方のイメージで読む練習なんかをするんでしょうか?それとも、どういう風にこの場に乗れる(発表できる)のでしょうか?やっぱり、イメージを持ってそれぞれ読まれていますよね?それはだから、やっぱり、そのイメージを増幅して読んじゃってるのか、どの程度、その、ぶっつけでばばっと読んでいるのか、どういう感じで読まれているんでしょうか?
 
すずき
(手を上げて)はいはい!僕は、何回かは読んでいるので、まるっきり初見という(わけではないという)か、書いているの自身も僕って言うこともあるんですけれども、読んでて思ったんですけど、「あ今、成さん(成沢)が乗り移ってる」っていうか(笑)「成さんの言葉になっている」っていう時と、そうじゃない時と、文章を読んでいる中でもいくつかありますね。
 
Cさん
聞いてても、なんかそういうの分かりますね。
 
すずき
ああ、そうですか(笑)。今自分の言い方になってるっというところと、ぱっつん(開発)なんかのを聞いてても思ったけど、「ああすごいぱっつんぽい〜」って思うところと「ああなんか茂子さんだな〜」って思うところと、あったっていうか…。だから、何回かは練習しますけど、できるだけ、どちらかといえば成さんに近づけて読もう、ということは僕の中では、あります。
 
Cさん
さっき、ほら、自分じゃない、イメージじゃない、強調されたりとか軽くなっちゃったりとか、そこらへんのとこなんかバランス、そこは面白さなのかもしれないけど、危険なとこなのか分かんないけど、そこらへん、どういう風な受け止め方をしてるんでしょうか?聞いているところは、そこだけ(聞き書きの部分だけ)聞いてるから…。
 
成沢
wwer02そうですね。書かれた言葉を音声化するっていうふうな事の中では、音声化、あの、役者っていうかなんだろ、セリフを読むのとちょっと違うっていうのがあって、少し試運転をしながら、読みながらだんだん乗り移っていくとか、ま、乗り移っていくのが良いのかどうかっていうのもありますし、乗り移り方も人によって違うんですよね。それはだから、淡々と読んでいるようだけれども、リズムに、その人の何かに入っていくという風に聞こえる時と、ある種、素じゃなくて違う言い方とか違う声の高さで、わざとその人に入ろうとして、音声的にそっから入って形をつくるっていうやり方と、ま、どれが正解って言うことはないんですけど、そういう風にやっていく中で、自分がしゃべったこととは違うような強調のされ方って言うようなことは、ま、あるとは思いますね。それが一概に全部、良いとか悪いとか、今はあんまり思えないんですけど、ただ、僕の場合は、語った時のシチュエーションと、やっぱりこういう、こんなにたくさんの人の中で、自分の言葉が、語った時にすごくリラックスして言ってるんだけど、それがそのままこうやられる(押し出されるような仕草)、人の前で言われていることの落差に、タジタジとしているというか(笑)。そういうことはあります。
 

Cさん
その中、その読まれた方のなんか、強調なり軽くするなり、それがなんか、その方(読まれた方)の理解でもあるかも分かんなくて(理解であるのだから)、それがなんか面白いというか
 
成沢
そうです、そうです。
 
竹森
一応まだ、ギルドの人って、もともとちょっと演劇かじってるとか、そうじゃない人もいるかもしれないし、でも何らかの形で演劇に関係してた人たちなので、慣れてるって言うこともあるんですけど、まったくそうじゃないワークショップをした時にやってもらって、中には小さい声でショボショボショボって読む人もいるんだけど、でもすごく良い時があったりして、だから良いってなんなんだっていうことも含めて、自分が聞いたのも、その人のような気持ちで読んでもらうっていうような面白さって言うのは、すごくあるとは思います。だから、いわゆる演劇の上手い下手とかじゃなくて、今(Cさんが)おっしゃったようなことはあるんだろうな、と。
 
成沢
だから、読んでて、自分の読んでる声が、その文章の中にある何かと「ぶつかってるな」って思えた時が、なんかそういう、「出会ってるな」って思った時が、多分、あれ(面白い?)なんじゃないかなって思うんですけどね。声にした時の感じ。
 
Cさん
そういう意味で、理解しあうって言うか、どう、だから、(今みたいに)こう第三者が聞いてると、どういう風に受け止めたら良いか分かんないけど、人がなんか理解しあうって言うか、なんか本質的なとこだな、っていう。
 
花崎
そうですね。ワークショップの時なんかは、同じ、起こしたテキストを、いろんな人に読んでもらうと、やっぱりすごく違うんですよね、同じものを読んでいても。あと起こす時も、テープに録ってあっても、はじめて聞く人にわかりやすいように語順を多少入れ替えるなどの編集をしたり、どこを残してどこを捨てようかみたいなところで、同じ話を聞いたんだけれども、出てくるテキストも違うって言うこともあって、そのあたりもすごく面白いんですね。
他にありますでしょうか?あと一つか二つでお終いにしなくてはならないんですが…。
 
Dさん
インタビューとかで自分の映像が流されるのと、ありますよねインタビュー映画、それを自分で見る場合と、それと違うわけですよね、今日は。構成して頂いた上で、それを見てもらうという感じがあるんですが、夢っぽいって言うか、昔寺山修司の実験映画で、映像の中から本物の人が出てくるっていうのがありますよね。だから、その、物になって、固定されて、客観化された映画になっていれば、それは別なんだけど、本当は額縁の中にいるはずの人がそこにおられて、なおかつお話して、ちょっと照れたりするっていうのが、ちょっと夢っぽく感じられるなっていう。
 
成沢
もうフィルムになってとかビデオになっちゃったら手出しは出来ないし、なんだろうな、…ですね。おっしゃる通り、だからそうなってる(映画になってる)のと、今日話されてる、ここでやられてるのは、だいぶやっぱり…(違いますね)。
 
竹森
2回やったら2回目全然違うんでしょうね。いや違うし、そういうい意味では映像にならない良さって言うのか、うん、あるのかなっていう気はします。勿体なさって言うか。
 
花崎
今日はあんまり吟味したわけじゃないんですけど、二人のインタビューした人(読み手)の間にインタビューされた本人(成沢、竹森)が挟まっている、これがまた並び方が違っても、距離感みたいなものが違うと、だいぶご本人たちの…
 
成沢
なんか被告人みたいな…
 
花崎
違いますよ(笑)、被告人じゃないですよ…。でもね、ど真ん中ですもんね。結構…。両方から聞こえてくるみたいな。えー、他に何かありますでしょうか?
 
開発
(開発の前にいる一番前に座っているEさんに)すごくメモっていますが、そんなにメモることが(笑)。全然違うこと書いてたりして(笑)。
 
Eさん
私、個人的には聞き書きってすごく好きなんですけど、それが何で面白いのかっていうこととか、それはどれくらいの人たちにとって…、個人的趣味、嗜好の問題なのか、もうちょっと普遍的に面白いものなのか、どっちなのかな〜、ていうことを考えていました。考えながら聞いていて、さっき(Bさんが)おっしゃってたその人の人生、みたいなもの、今日、私は、茂子さんが結婚に至るまでが、多分、今、自分が(その時と)同世代なので、その辺、面白いなと思いました。これから自分が何をしていけるのか、迷いが一つ増えたかなとか思ったり、そういうことは、他の人たちにとっても面白いのかな?っていうのはまだ分かんないんですけど、私にとっては面白いことなんだな、っていうことを思いました。
 
花崎
hanasakiありがとうございました。今日はお天気が大雪なので、あまり長引かないようにしたいと思います。私も今日改めて聞きながら、あそこにある聞き書きの事例として持ってきた本なんかは、読まれるって言うか黙読される文献資料として残していくことを意識してつくられていると思うんですね。ですけど、私たちがやっているのは、そういう意味では、もちろん記録として残していくということもあるんですけれども、声に出して読んだり、それを聞く人がいたり、聞いてどうだったのか、どのように聞くのか、同じ話を聞いてもこの人はこういうところに関心を持つんだな、とか、また、読まれた聞き書きを聞いてインタビューされた人がどう思ったのかとか、この人はこういう風に読むんだなとか、インタラクティブな、ひとつの演劇的な対話の方法として捉えています。私たちの…、「ギルドは演劇だけじゃない」って茂子さんが言っていて、それを(ギルドの)みんなも「そうだな」って思って聞いていたと思うんですけど、しかし、演劇を一つの頼りにしてるっていうのかな、そこ(演劇)に関心を持ってやっているので、演劇的にどういうふうに展開していくのかすごく良い演劇をつくりたいと、思ってるメンバーもいるし、いやそれよりももっと違う使い方、人との関係だとか、何かを理解するとか知るとか…。
 

すずき
もっと言えば、何が良い演劇かっていう
 
花崎
そうそうそう。そうですね。なんか、そういうことをグチャグチャグチャグチャおしゃべりしながら、なかなか進まないんですけれども、ま、今日の聞き書きを読む会のように小さい、顔が見える範囲でギルドカフェを続けていって、また、皆さんとぜひ意見交換とかコメントとかを頂きながら、自分たちの活動も、ボチボチですけども、丁寧にやっていきたいな、と思っています。どうも本当に今日は雪の中、ありがとうございました。

 

2013.01.14

 

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